実践的資金調達原論 「思うように資金調達ができない方へ」worldheritage512_2_20120529004622.jpg

2014年08月14日

金融機関が好む決算書とは 3

今日は前回の続きで、Aの(固定資産ー純資産)/(経常利益×0.6+減価償却費)について書きます。

この数式は私が親しくしている某銀行の部長が非常に重視している数式なので参考になります。
設備投資がかさむ業種の会社にとって、融資余力がまだあるかどうかを審査するときの重要な指標になっています。
この指標の見方は10以内ならばOK、つまり10年以内ならOK。
キャッシュフローで10年以内に債務の返済あるいは未払等の精算できない会社には、これ以上貸せないと判断するために参考にしている指標なのです。
ただ業種によって違います。
例えば不動産会社には10年以上であってもOKです。
これは担保に不動産と言う保全しやすい担保があることや、どうしても固定資産が大きくなりがちで、それに応じて借入金も大きくなるからです。
また、パチンコホール企業には数式の中の経常利益を税前当期利益で判断します。
理由は除却損などで利益調整、要は節税している会社がやたら多く、経常利益と当期利益がかけ離れているようなケースが多いからです。
ここで注目してほしいのは、この数式に入っている項目です。
固定資産、純資産、経常利益、減価償却費。
この中で減価償却費は固定資産が増えれば、普通に計上すればこれも増えるから普通に計上していただければ問題はありません。
ただ、時折黒字決算にするために減価償却費を決算書に計上していないケースがありますが、これは、この数式から考えればキャッシュフローが小さくなって指標が悪くなりますし、減価償却すべき資産を保有しているのに、減価償却費を計上していないことは、金融機関の印象を非常に悪くします。
無理して黒字にしているような印象を持たれ、もっと他にも利益操作をしていて、赤字を隠しているのではないかと、いろいろ探られるきっかけになります。
   
ここからは、この指標を良くしようとすればどうすればいいかを考えます。
・「固定資産は小さな方が良い。」
これについてはより効率的な経営、あるいはスリム経営をしている会社が融資を受けやすいことを示しています。
 
・「純資産は大きい方が良い。」
この問題は重要です。
多くの中小企業の経営者が勘違いしているところです。
昨日も書いたことですが、節税と融資は両立しないと書きました。
節税で純資産が小さいと融資は受けづらいのです。
まして、債務超過会社ともなると、純資産がマイナスなのだから、本来、まったく融資の対象になりません。
それなのに、不動産担保ローン、ファクタリング、売掛担保融資、手形割引などなら金融機関から見て、保全ができるものがあるから良いとして、企業与信による無担保融資が受けることができると思っている経営者がけっこう多いのには驚きます。
財務超過に陥ったら企業与信を前提としたファイナンスは受けることができないと認識していただきたいと思います。
債務超過になっているのに、無担保融資を求めて様々なところを訪ね歩くのは時間の無駄。
現実を見つめなおして資金調達の戦略を再考していただきたいと思います。
でも、事業をやっていれば当然ながら赤字経営になることもあります。
そんな時、純資産が大きいと債務超過になってしまうリスクが少なくなります。
だから、内部留保と資本金の大きさは非常に大事です。
内部留保は先ほども書きましたが、節税を重視すると小さくなります。
そして、ぜひお伝えしたいのが資本金大きさです。
まだまだ資本金が事業規模と比較して小さい会社を数多く見ますが、事業規模に応じた資本金の大きさは必要です。
なぜなら抵抗力が強い会社と言う印象を与え、金融機関の印象は上がるので、ぜひ事業規模に応じた資本金を検討していただきたいと思います。
代表者、役員など会社関係者から多額の借入ある場合、これを短期借入金と計上するのと、これを株式化して増資して資本金が大きくなっているのとでは、まさに月とスッポンです。
  
・「経常利益は大きい方が良い。」
これは当然です。
経常利益が大きい会社は純資産の大きさにもつながりますし、会社の本質的な収益力が強いわけですから融資が受けやすくなのは当然です。
当期利益も重要ですが、経常利益の方が会社の収益力を見る時には参考になります。
当期利益は特別利益や特別損失によりどうにでもなると言っては過言かもしれませんが、一時的、突発的な儲けや損失が計上された後の状況ですから、会社の収益状況の本質的なところが見えなくなる場合があります。
その代表的な例がチンコホール企業です。
多くの場合、節税ために閉鎖した店舗や改装による旧設備などの除却損が巨額に計上されているケースが本当に多く、上述しましたが、パチンコホール企業だけは税引き前の当期利益で見ると言うのは当然です。
   
以上、(固定資産ー純資産)/(経常利益×0.6+減価償却費)から見て、融資が受けやすい会社とは、どのような体質の会社であるかについて説明してきました。

当たり前じゃないかと思われたかと思いますが、この当たり前なことが理解されていないケースが本当に多いのです。
節税しまくった結果、純資産が圧縮されているのに、いざ新しい事業に大きな額の融資を計画しても、それは現実的に難しいのです。
別に税務当局の味方ではありませんが、純資産を厚くするには、納税は不可避です。
バランスの問題で、節税も必要とは思うものの、やり過ぎは純資産を棄損して、融資にとっては大きな阻害要因になります。
実際、私でも、納税申告書の頭が0だと、難しそうな案件だなと条件反射的に感じるように、金融機関も大いに感じていると思います。
融資はその会社の見えないポテンシャルも見なければならないとは思うものの、やはり決算書と言う、まさに通信簿は、会社の状況と実績、要は信用力を唯一客観的に証明するものなので、本当に融資にとっては重要です。
ぜひ、決算書を大事にしていただきたいと思います。
次回は、このシリーズの最終回として、流動資産の話をしたいと思います。
posted by bhycom at 01:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 資金調達 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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